大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和30年(う)2号 判決

元来、横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは、他人の物の占有者が、委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思をいうのであつて、必ずしも、占有者が自分の所有となし、もしくは自分が利益を得ることは必要でない(昭和二三年(れ)第九二〇号、最高裁大法廷判決参照)。そこで、今、所論に鑑み、原判決挙示の証拠を綜合すれば、被告人が原判示第二掲記の田中新次郎から日本電建株式会社鹿児島支社に対する掛金として預つた金額は、合計金六二、四〇〇円ではなく、金六七、二〇〇円であり、しかも、被告人は右預つた金員の内金四二、二〇〇円については、さきに、酒井雪乃から預つていた右と同じ趣旨の掛金を費消していたので、その方の穴埋として、これを勝手に酒井雪乃に対する弁償にあてたいきさつが認められるから、前説示するところにより、本件金員を酒井雪乃に対する穴埋として支払したとき、既に不法領得の意思のあつたことを知ることができるから、本件横領罪の成立することは多言を要しないところである。それで、後日に至り、被告人と前掲会社及び被害者との間において、所論のような工作がなされ、被告人に利得するところはなく、且つ、被害者に損害を及ぼさなかつたとしても、それ等の事由は、本件横領罪の成否には何等の消長を及ぼすものではない。さすれば、原判決の認定には何等間然するところはなく、論旨は、結局、原判決の適法になした証拠の取捨判断を非難するに帰するから、採用することを得ない。

(裁判長裁判官 山下辰夫 裁判官 二見虎雄 裁判官 長友文士)

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